「共通キューサイン」と「共通口形記号」の紹介

日本キューサイン研究会

 日本キューサイン研究会は、従来から聴覚特別支援学校(聾学校)で活用され、聴覚障害児の日本語獲得に効果があるとされてきた「キューサイン」の意義や使用方法について研究協議を行う研究会であり、2016年に発足しました。

聴覚障害教育現場では、補聴器の装用によっても聞こえが不十分であるような子どもたちに対し、早期から日本語の音韻(主に子音)を視覚的に表す手段が有効であった事例が多く報告されてきました。

このサイトでは、手指の巧緻性が未熟な乳幼児にとっても使いやすく、保護者も習得しやすい「共通キューサイン」(試案)を紹介します。この「共通キューサイン」は、実際に試用していく中で、様々な改良点が見えてくると思われ、基本的な方針は変えないまでも、今後修正(バージョンアップ)していく予定です。

原島 恒夫(筑波大学)  
長南 浩人(筑波技術大学)
脇中起余子(筑波技術大学)

キューサインとは

 戦前から多くの聾学校では、発音指導場面で「発音誘導サイン」が使われていましたが、その使用は発音指導場面に限定されていました。

 戦後、京都府立聾学校がこの「発音誘導サイン」を日本語指導場面でも使い始め、成果をあげたことから、全国に広がりました。日本語指導場面や日常のコミュニケーション場面でも用いられるようになったサインは、それまでの発音指導場面に限定される「発音誘導サイン」と区別するため、「キュードスピーチ」「キューサイン」「キュー」などとよばれようになりました。各校でキューサインの使用を始めるにあたってあたって、校内ではそれまで用いてきた発音誘導サインを母体としたため、現在のキューサインは聾学校によって異なっています。

 従来日本で用いられてきた「キューサイン」を「キュードスピーチ」と言う人も多くいますが、アメリカにおいてコーネットが開発した「キュードスピーチ」と日本で用いられている「キューサイン」は、その成立過程や手型が異なるため、明確に区別するためにも、本研究会では「キューサイン」という用語を用いています。

キューサインのメリット

  1. キューサインは、実際の発話音声のスピードやリズムに合わせやすく、日本語の音韻を正確かつリアルタイムに伝えることができます。(日本語は 1 拍(モーラ)がシンプルな子音+母音で構成され、それがある程度一定のリズムで表出されているため、日本語独自のシンプルなキューサインは大変覚えやすく、使用しやすいといえます。)
  2. 読唇・読話に加えてキューサインを用いることにより、聴覚活用+読唇・読話によっても不足する子音情報を補完し、音韻がさらに確実に伝わりやすくなります。また、キューサインを用いなくなったあとでも、読唇や読話の習慣が残りやすいといわれています。
  3. キューサインは、指文字に比べて手型の数が少ないので、覚えやすいです(「あいうえお・・・わん」の45文字について、手型の数は、指文字は45個、キューサインは11個です。)
  4. キューサインは、手指の巧緻性が未熟な子どもでも使いやすいです(共通キューサインでは、「5本指を広げたパーの形の指」と「人差し指を立てて1を表す指」の形が基本なので、1歳児でも表すことができます。)

「共通キューサイン」を考案し、Webで公開する目的

  • 「共通キューサイン」は、子どもがのちに手話と指文字を使用することを妨げるものではありません。また、現在独自にキューサインを使用している聾学校に、共通キューサインへの変更を促すものでもありません。キューサインを今後導入する学校やキューサインの見直しをする学校、家庭内でのより確実なコミュニケーションのためにキューサインの使用を考えている保護者に対するモデルとなればと思っています。
  • 「共通キューサイン」を考案した理由
    従来のキューサインが学校や人によって異なるための「通じない」という状況を少しでも減らすためです。
  • Webで公開する目的
    1. 聴覚障害教育・療育関係者に知っていただくためです。
    2. 聴覚障害児をもつ保護者に知っていただくためです。(人工内耳などによっても日本語が正確に伝わらない場合には、日本語の音韻を視覚的に補完する手段が必要です。指文字の習得はハードルが高いと感じる保護者や子どもに、乳幼児でも習得しやすい共通キューサインを紹介します。)
    3. 世界における聾教育の発祥地であるフランスでは、キュードスピーチの有効性が確認されており、キュードスピーチ通訳者まで養成されています。フランスでは、「キュードスピーチ通訳」に対するニーズがありますが、これは将来の日本でも期待できるものと思われます。

「共通キューサイン」考案にあたっての基本方針

  1. 発音誘導サインとしての特徴(舌の動きを手で表す、など)を活かす
  2. 手型はシンプルにする(1歳台の子どもでも使えるようにする)
  3. 読唇・読話のために、口形を隠すことがないようにする
  4. 濁点のある仮名のキューサインは、濁点のない仮名のキューサインとの間に関連をもたせる

「共通口形記号」を考案し、Web で公開する目的

「口形記号」や「口形文字」は、戦前から聾学校で発音指導やひらがなの前段階の記号として使われてきました。

  • 「共通口形記号」は、現在独自に口形記号や口形文字を使用している聾学校に、共通口形記号への変更を促すものでもありません。口形記号を今後導入する学校や口形記号の見直しをする学校、家庭内でのより確実なコミュニケーションやひらがなへの橋渡しのために口形記号の使用を考えている保護者に対するモデルとなればと思っています。
  • 「共通口形記号」を考案する理由
    従来の口形記号が学校や人によって異なることについて、使用時期が短いため、「通じない」という状況はさほど生じませんが、口形記号を使わなくなった聾学校が再度使用できるようになるためです。

Web で公開する目的

  1. 聴覚障害教育・療育関係者に知っていただくためです。
  2. 聴覚障害児をもつ保護者に知っていただくためです。(人工内耳などによっても日本語が正確に伝わらない場合には、日本語の音韻を視覚的に表す手段が必要です。ひらがなを習得する前の乳幼児でも習得しやすい共通口形記号を紹介します。)

「共通口形記号」考案にあたっての基本方針

  1. 戦前から発音指導時に発音要領とひらがなを結びつけるために用いられてきた記号の特徴を活かす。
  2. 記号はシンプルにして書きやすいものにする。
  3. 母音は赤色、鼻音は黄色あるいはオレンジ色、無声の破裂音と摩擦音は青色、有声の破裂音は緑色のように、発音の特徴によって色を使い分ける。
  4. 単語を口形記号で表すとき、多様な色を使い分けることは大変なことから、全て黒色になっても見分けられるようにする。
  5. /a/は大きな○、/u/は小さな○で表すと、一文字だけでは区別が困難なことから、大きさに関係なく弁別できるようにする。
  6. 濁点のある仮名の口形記号は、濁点のない仮名の口形記号との間に関連をもたせる。
  7. 拍(モーラ)との関連に配慮する。

補足説明

  • 発音指導のとき、「ヤ」は「イ+ア」、「ユ」は「イ+ウ」、「ヨ」は「イ+オ」のように指導する場合があるため、ヤ行の口形記号は、母音「ア」「ウ」「オ」の記号の上に「イ」の記号を載せる形とした。
  • 拗音「ャュョ」について、「キャ」は、「キ+ア」に近いと考え、「キ」の記号の右下に小さい「ア」の記号をぶら下げることとした。同様に、「シュ」は、「シ+ウ」に近いと考え、「シ」の記号の右下に小さい「ウ」の記号をぶら下げることとした。
  • 拍(モーラ)に関して、「キャ」「シュ」は1拍とするが、促音「ッ」はそれだけで1拍とするため、「キャッ」は、「キャ」と「ッ」を少し離すこととした。

収録内容

共通キューサインの動画とイラストの一覧

共通口形記号のイラストの一覧

共通キューサインと共通口形記号の一覧